歯車の設計
6 歯車のバックラッシ
6.5 バックラッシを小さくする方法 (ゼロバックラッシ歯車)
小さなバックラッシ又はバックラッシゼロは、高精度な位置決め精度が必要な歯車装置などに求められる性能です。最近は、その要求が以前よりも増加しています。各種の歯車で小さなバックラッシ、更にはゼロバックラッシを実現する方法も紹介します。 |
(1)歯厚減少量の小さな歯車 (一般的な方法) 一般的な歯車よりも歯厚減少量が小さな歯車を作って、正規の中心距離又は組立距離でセットして使えば、バックラッシは比較的に小さくすることができます。この方法はバックラッシをゼロにはできませんが、全ての種類の歯車に適用可能な最もシンプルな方法です。歯溝の振れの小さな歯車を使えば、バックラッシの変動は小さくできます。 バックラッシがゼロになってしまうと、スムーズに回転を伝えることができない可能性がありますから注意が必要です。 |
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(2)小さなバックラッシに調整できる歯車 バックラッシを小さく調整できる歯車又は構造を用いる方法です。バックラッシゼロではありません。 |
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(a)中心距離調整方式 平歯車、はすば歯車、ねじ歯車及びウォームギヤなどに適用できます。歯車の中心距離を小さくすることにより、半径方向の遊びを調整して、バックラッシを小さくします。中心距離を調整できる構造が少し複雑です。 |
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(b)組立距離調整方式 かさ歯車の組立距離を小さくすることにより、バックラッシを小さくします。 かさ歯車の場合、片方の歯車の組立距離だけ大きく調整すると、歯当たりに悪い影響が出ます。両方の歯車の組立距離をバランスよく調整するのが基本です。 組立距離調整はシムによる方法が一般的です。 |
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(c)歯車を二つに分割する方法 ほぼ全ての歯車に適用可能な方法です。 歯車を二つに分割して、相互の歯の位相関係を調整して固定し、バックラッシを小さくします。原理を図6.4に示します。 |
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はすば歯車やウォームの場合は、片方の歯車①を軸方向に移動して、相互の歯の位相を調整する方法もあります。原理を図6.5に示します。 | ||
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(d)テーパギヤ(平歯車及びテーパラック) テーパギヤは、別名をコニカルギヤ(conicalgear)ともいいます。 テーパギヤは歯を連続的に転位して円すい状にした歯車ですから、連続的に歯形/歯厚が変化します。 テーパ平歯車の歯形を図6.6に示します。 テーパギヤを軸方向に移動すればかみ合う歯の歯厚が変わりますから、バックラッシを調整することができます。テーパギヤを軸方向に移動するには、シム調整による方法がシンプルで確実です。 テーパギヤは、かさ歯車とは異なり、軸方向に移動しても歯当たりが変わらない長所があります。 |
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(e)複リードウォームギヤ 左右の歯面のモジュールの大きさを変えた歯車です。 ウォームの左右歯面のピッチが異なりますから、歯厚は連続的に変化しています。 ウォームを軸方向に移動することによりかみ合い部の歯厚が変わりますから、バックラッシを調整することができます。 軸方向への調整はいろいろな方法が考えられますが、他の歯車と同様にシムによる方法がシンプルで確実です。 歯面の油膜切れを起こさないように、ある程度のバックラッシを確保する必要があります。ゼロバックラッシは好ましくありません。 複リードウォームの原理を図6.7に示します。 |
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(3)バックラッシをゼロにできる歯車 外力により強制的にバックラッシを除去する構造の歯車です。 歯車は両歯面かみ合いになりますから油膜切れを起こさないような潤滑に注意が必要です。 この方法は、ウォームギヤ又はねじ歯車のように動力伝達に歯面の滑りが大きな歯車には不向きです。 滑りが大きな歯面において油膜が切れた場合は、急激な歯面摩耗の危険があります。 円周方向のバックラッシゼロにするシザーズギヤ ばね力などにより2分割した歯車で相手歯車の歯を強く挟んでバックラッシを除去する方法です。図6.8に構造例を示します。 |
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こちらの技術資料は冊子カタログ3013(2015年)当時のデータであり、一部データが古い場合があります。最新情報は最新カタログでご確認下さいますよう、お願いいたします。
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