歯車の設計
17 歯車を用いた機構
17.1 遊星歯車機構
最も単純な遊星歯車機構は図17.1のように、太陽歯車A、遊星歯車B、内歯車C、及び遊星歯車を支持し、公転運動を取り出す回転要素である遊星キャリヤ(遊星枠)Dの4つの基本要素から成り立っています。 | |
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この遊星歯車機構は、入力軸と出力軸を同一軸上に配置できるとか、2個以上の遊星歯車にて負荷を分担するので装置をコンパクトに設計できるなどの特長があります。 その反面、構造の複雑さとか、内歯車の干渉問題というむずかしい点もあります。 |
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図17.1の遊星歯車機構は、太陽歯車と内歯車と遊星キャリヤD の3つが基本軸になっています。 |
(1)遊星歯車機構における歯数の条件 この機構において太陽歯車A (z a )、遊星歯車B (z b )、内歯車C (z c )の歯数と遊星歯車の数Nを決めるには、次の3つの条件を満足する必要があります。
この内歯車の干渉の問題については、4.2内歯車の計算で説明してありますが、それらも満足させなければ遊星歯車機構は成立しません。 |
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(2)遊星歯車機構の速度伝達比 この遊星歯車機構においては、固定する要素をかえることにより速度伝達比や回転数方向がかわります。それらを図17.3に示します。 |
図17.3 遊星歯車機構のタイプ |
(a)プラネタリ型 これは内歯車Cを固定するタイプです。 このタイプで太陽歯車Aを入力軸、遊星キャリヤDを出力軸とするときの速度伝達比を、数表法によって次のように求めます。 |
No. | 説明 | 太陽歯車A z a |
遊星歯車B z b |
内歯車C z c |
遊星 キャリヤD |
---|---|---|---|---|---|
1 | 遊星キャリヤを固定し 太陽歯車Aを1回転する |
+1 | 0 | ||
2 | 全体を糊づけにして 回転する |
||||
3 | (1)と(2)を合計する | 0 (固定) |
-
(17.7)
たとえば、z a = 16、z b = 16、z c = 48であれば、速度伝達比は4となります。
(b)ソーラ型 これは太陽歯車Aを固定するタイプです。 このタイプで内歯車Cを入力軸、遊星キャリヤDを出力軸とするときの速度伝達比を求めます。 |
No. | 説明 | 太陽歯車A z a |
遊星歯車B z b |
内歯車C z c |
遊星 キャリヤD |
---|---|---|---|---|---|
1 | 遊星キャリヤを固定し 太陽歯車Aを1回転する |
+1 | 0 | ||
2 | 全体を糊づけにして 1回転する |
-1 | -1 | -1 | -1 |
3 | (1)と(2)を合計する | 0 (固定) |
-1 |
-
(17.8)
たとえば、z a = 16、z b = 16、z c = 48のときの速度伝達比は1.33333となります。
(c)スター型 これは遊星キャリヤDを固定するタイプです。 このスター型においては遊星歯車は自転のみで公転しませんから、厳密には遊星歯車機構とはいえません。 このタイプで太陽歯車を入力軸、内歯車を出力軸とするときの速度伝達比は
入力軸と出力軸の回転方向は反対です。 たとえば、z a = 16、z b = 16、z c = 48のとき、速度伝達比は-3となります。 |
こちらの技術資料は冊子カタログ3013(2015年)当時のデータであり、一部データが古い場合があります。最新情報は最新カタログでご確認下さいますよう、お願いいたします。
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