歯車の設計
11 プラスチック歯車の設計
11.1 MCナイロンとジュラコン(R)の物性
プラスチック歯車の強度計算へM CとはM ONO CASTの略で、本質的には6ナイロンと呼ばれるポリアミド樹脂です。 ジュラコン(R)とは、「アセタール・コポリマー」と呼ばれる結晶性の熱可塑性のエンジニアリング・プラスチックです。なお、ジュラコン(R)はポリプラスチックス 株式会社の日本その他の国の登録商標です。
|
||||||
このような特長を持つ反面、プラスチック材料の一般的な性質として、特に温度の上昇及び水分の吸収によって性質が変化します。 これが、プラスチック材料を、歯車などの機械要素部品に使用する場合の、問題点となっています。このため、プラスチック材料については、 代表的な条件での性質を知り、これに基づいて概略的な設計を行ない、実用試験を繰り返した上で、本格的に使用するのが一般的な方法となっています。 |
(1)機械的性質 表 11.1に標準状態における機械的性質を示します。これらの機械的性質は、温度が上昇すれば、強さは低くなる傾向があります。 |
表 11.1 MCナイロンとアセタールコポリマーの機械的特性 |
(2)熱的性質 | |
プラスチック材料は、金属材料に比べて温度による寸法変化が大きく、注意が必要です。 |
|
表 11.2 MCナイロンとアセタールコポリマーの熱的特性 | |
|
(3)吸水性 プラスチック材料は、一般的に吸水性があって、機械的性質や耐摩耗性などを低下させる欠点があります。 |
表 11.3 MCナイロンとジュラコン(R)の吸水率 | ||||||||||||||||||
|
ジュラコン(R)はMC ナイロンと比較して、吸水性の少ないプラスチックです。 MC ナイロン製品は、吸水によって寸法が変化いたします。ご購入時の寸法が使用する環境や気候的影響によって若干の寸法誤差が生じます。 図11.1に、MC901の水分吸収率と寸法増加量を示します。 |
|||||||
図11.1 MC901の水分吸収率と寸法増加量 | |||||||
|
(4)耐薬品性 |
||
MCナイロンの耐薬品性は、通常のナイロン樹脂とほとんど同じです。 一般的に、有機溶剤に強く、酸に弱いです。 |
||
その特性をまとめると、次のようになります。 | ||
多くの無機酸には常温、低濃度でも無条件には使用できません。 | ||
無機アルカリには、常温においてかなりの濃度まで使用できます。 | ||
無機塩の水溶液にはかなりの温度、濃度まで使用できます。 | ||
有機酸(蟻酸を除く)には、無機酸よりかなり安定です。 | ||
エステル類、ケトン類には、常温において安定です。 | ||
芳香族には常温において安定です。 | ||
鉱物油、植物油、動物油脂には常温において安定です。 |
表11.4 にナイロン樹脂の耐薬品性を示しますが、使用条件により異なる場合がありますので、予備試験等を行ってください。 |
表11.4 MC ナイロンの耐薬品性 (○はほとんど侵されない △条件付使用可 ×使用不可) |
|||||||||
|
ジュラコン(R)の特長として、耐有機薬品性が良好です。しかし、この性質は 逆に適当な溶剤型の接着剤が見当らない欠点となります。 |
||
その特性をまとめると、次のようになります。 | ||
無機薬品に対しては、良好な抵抗性を示しますが、硝酸、塩酸、硫酸などの強酸類には侵されます。 | ||
合成洗剤などの家庭用薬品に対しては、ほとんど実害はありません。 | ||
高温の潤滑油中で長時間使用しても、殆んど劣化しませんが、高級潤滑油中の添加物によって、若干影響される場合もあります。 | ||
グリースの場合も潤滑油と同じで、グリース中の添加物によって影響を受ける場合があります。 | ||
個々の薬品に対する耐性を知るには、それぞれのプラスチックメーカーが出している技術資料を調べなければなりません。 |
こちらの技術資料は冊子カタログ3013(2015年)当時のデータであり、一部データが古い場合があります。最新情報は最新カタログでご確認下さいますよう、お願いいたします。
KHK総合カタログ 2023
「選定しやすくリニューアル」をテーマに各種ラック&ピニオンの充実、潤滑システムの新規取り扱い、締結シリーズの拡充など、
新製品を含め200品目、30,000種の歯車を収録した新総合カタログ「KHK2023」をご用意しました。
最新版 2023/6/21現在 ≫お申し込みはこちら |
KHK製品のカタログ記号で検索